都市伝説・不可思議情報ファイル

    2014年10月

    581 あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/05/27 01:02 余り周囲の人には言えないタイプの話なのですが、こちらでなら聞いていただけるかも知れないと思い、書き込んでみます。とにかく誰かに聞いてもらって自分の中で整理をつけたいのです。長いんですが…。 

     二年前、義理の姉が死んでしまいました。 
     後述する様に、私が明確に「自分の家族だ」と思って居るのは兄しか居ません。兄も同様ですので、兄の結婚後離れて暮らす様になっても互いに行き来し合っていた事もあり、私と義姉とは本当の家族の様になっていました(少なくとも私はそう思っていました)。 
     だから新婚だった兄の悲嘆は深いものでしたが、私も大学を休学する程落ち込んでしまっていたと言う状況でした。兄夫妻が暮らしていた実家の私の部屋で私は義姉の事に付いて考え続け、そして妙な事を思い出したのです。 
     それは子供の頃の記憶でした。忘れた事はなかったのですが、特に思い出したり義姉と結び付けたりする様な事はなかった様なものです。 
     それはこんなものでした。 



     私と兄とは、子供の頃一時期東北の親戚の家に預けられていました。私の家はちょっと環境が複雑で、両親は殆ど日常茶飯事に姿をくらますと言う状況でした。ですから多分、逐電対策として手の空いて居た親戚の所に放り込まれたのだと思います。 
     今にして思えば、あれ自体が不思議な体験でした。多分過疎の村だったのだと思いますが、何しろ老人しかいないのです。少なくとも子供なんかはおらず、就学年齢前だった私はともかく、五歳年上の兄迄も、学校にも行かず日がな一日ぶらぶら畑の中の道を歩いていました。
    親戚の人に意地悪された記憶なんかはないのですが、親切にされたと言う記憶もなく、はっきり言うと何処の誰だったかも思い出せない曖昧な過去です。私達は大声を出して遊ぶ事も憚られる様なその静かな村で、「寂しいねー」とか言いながら過ごしていました。 
     で、そこで私は一日だけちょっと不思議な体験をしたのです。 
     はっきり言って不思議と言ってもこの段階では「地味」なものに入ります。老人ばかりのその村の私達兄妹だけの遊び場に、若い女の人がやって来たのです。 
     幼児らしく思考能力のなかった私の方は「わーいお姉さんだー。今日はー」とか言っていた記憶がありますが、兄は流石に警戒して私を引き戻したりしていました。ですが兄もそのうち慣れてしまった様で、私達は三人で暗くなる迄遊びました。 
     で、何処が不思議なのかと言うと、先ず、次の日からそんなお姉さんには全然会えなかったと言う事。そしてそこは東北であったにも関わらず、何故か女性は関西の言葉を話していた事(これは実を言うと曖昧です。でも、多分そうだったと思います)。 
    更に、そのお姉さんが時々私達に理由もなく謝っていた事です。 
     一番最後の事があった故に、私はこの出来事を覚えているのです。遊びの切れ間にいきなり「ごめんね」とか言い出すので、ぎょっとするわ少し怖いわで、そのお姉さんの事を「変だなあ」と思っていました。 
     記憶はここ迄。で、「実家で義姉について考えて居た」所迄話を戻します。 

    583 あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/05/27 01:08更に続いています。 

     物凄く哀しんでいたから、多分その所為もあるんでしょうけど、記憶の中のその女性と義姉が、私には同一人物としか思えなくなりました。 
     顔も似ていた様な気がするし、姉も関西人でした。飛躍し過ぎだとセルフ突っ込みを入れつつも、思考は止まりません。そしてもう一つ小さな事を思い出しました。 
     兄と義姉が結婚する前、「あの兄の何処が良かったの」みたいな事を訊ねたら、義姉は「○○(兄の名前)君に物凄い勢いで口説かれてそのまま流された」と笑って答えたのです。 
    正直、にわかには信じ難い話でした。先程お話した様な家庭の事情が原因だと思うのですが、兄には人間不信気味な所があります。 
    大人になっても兄は、顔も頭も決して悪くないのに「怖い人」で通っており、家族以外にフレンドリーにしている所なんか見た事もありませんでした。
    以上の様な事情を話しつつ義姉からより話を聞くと、「前に会った事がないか」としつこく言って来たというのです。 
     単に物凄く義姉が好みだったに過ぎないと言う可能性もありますが、それにしたって、少しでも兄を知っている人にとって彼が人を口説いたりする様を想像するのは中々困難です。 
    本当に「兄は義姉と以前に会っている」と考える方が私には自然に思えます。で、それは子供の頃に会ったあのお姉さんじゃないだろうか!と。 
     その時は盛り上がりましたが、やがて二、三ヶ月経ち、どうにか立ち直って来てみるとどう考えても違う様に思えて来ました。兄も取りあえず外見は大丈夫そうになって来ていたし、私はバイトもあったので大学近くのアパートに戻る事にしました。 


    585 あなたのうしろに名無しさんが・・・ 02/05/27 01:10 

     それで、二年が普通に過ぎまして、ついこの間の事です。 

     今年のゴールデンウィークに私は兄と会い、多分初めて、姉が死んだ時の話を兄の口から聞きました。 
    姉の死因は交通事故です。病院に運び込まれて、手術前に兄と話した時、義姉は「先に死んじゃうなんて●●ちゃん(私です)にもうしわけない」とか「ちゃんと謝りたい」みたいな事を言ってくれていたそうです。 
    家庭に恵まれなかった私の事を、姉はいつも気にかけてくれていました。 
     それで、私は子供の頃会ったあの女の人の事をまた思い出したのです。 
     姉は優しい人だから、幼少時見捨てられた子供だった私達の事を最後迄気にかけて、訪ねてくれたのではないか。 
    そして(そんな事いいのに)謝ってくれたのではないだろうか。そう思った訳です。 

     何だかすっきり整理が付いた様な口調ですが、本当はそうでもなく、可能性が増えてしまっただけに結構混乱しています。 
    兄に、昔のあの女性の事を義姉だと思っているか、なんて話は流石に出来ないし、友人達にするには家庭の事情を話さなければならない部分も多い為、躊躇われるのです。 
     長くなってしまってすみません。でも、私の中でちょっと整理がつきました。「不思議だなあ」って体験です。 
     それでは。 
     あ、こちらのスレ好きですので、これからも楽しみに読ませて頂きますね。 

    676 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 19:54:31.82 ID:rASUw6UJ0長文失礼します 

    単なる偶然かもしれないし、本当に何か不思議な話かもしれない そんな話です 


    この間買った車(赤のカローラ・フィールダー)が納車になり、試運転もかねて地元の神社に行った。 
    特に全国的に有名な神社ではないんだが、一応は一の宮なので規模もそこそこなんだよね。 
    昼飯食ってから実家を出発 田舎道を1時間ばかり運転して、神社の駐車場に到着 
    車の中でタバコすいながら休憩してると、妙なことに気づいた 

    駐車場に俺しかいないんだよね 
    100台くらいは停めれそうな駐車場に俺の車しかいない 
    普段なら参拝に来た地元の年寄りの軽トラやドライブがてら来たみたいな感じのミニバンがいるんだけど、1台もいない 


    677 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 19:55:18.58 ID:rASUw6UJ0何だか気持ち悪く感じて、外に出ることもできず 
    かといって軽いパニック状態なんで、エンジンかけて帰るって事も思いつかず 
    ただひたすら「何かおかしくね?あれ?何で?何かおかしくね?」って感じでテンパってた 
    真昼間なのに何か凄く不気味な感じがした 

    何分ぐらい経ったのかわからんけど、ふいに1台の白いセダンが駐車場に入ってきて、俺の車から少し離れたところに停車した 
    角ばったボディに4つ目のなんとも古めかしい車なんだけど、古い感じがしない 
    古い車って塗装がボケてたり、ナンバープレートの文字が褪せてたり薄汚れた感じの、いかにも古い感じがするけれど、そういうのが一切ない 普通に街中を走ってる現行の車みたいだったんだ 

    「俺以外にも人がいた」って思って少し落ち着いたんだけど、もっと人がいてもおかしくない昼間なのに2台きりってのがやっぱり不気味だし何だか居心地悪いので、家に帰ることにした 



    678 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 19:57:11.61 ID:rASUw6UJ0家に帰って、何気なく神社での出来事を親父に話すとびっくりした顔で「それ爺さんかも知れんぞ」と言い出した 爺さんは10年以上前に亡くなっているので、車を運転して神社に来るわけがない 
    訳がわからないので、詳しく話を聞くと30年以上前にこんな事があったらしい 

    ある日爺さんがまだ幼稚園児だった俺を連れて、神社までドライブに行くと言って出て行った 
    帰ってくるなり「神社に妙な車がいたが、あれは外車か?」と親父に尋ねたそうだ 
    多分凄く印象に残っていたので、車好きの親父にどこのメーカーの車か教えてもらいたかったんだろう どんな車かと特徴を聞いてみたが、当時の親父が知る限り、そんなデザインの車はない 
    というか、話を聞く限り、当時のデザインの常識からはかけ離れた感じで、どの国産・外車にも当てはまりそうにない車だった 

    680 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 19:59:16.24 ID:rASUw6UJ0爺さんが言うには、神社の駐車場に着くと自分の車以外には「釣り目ライトで新幹線みたいに丸みを帯びた、のっぺりとした赤いライトバン」が1台停まっているきりで、 
    そのライトバンもしばらくすると行ってしまい、1台きりの駐車場が何だか不気味で参拝もせずに帰ってきてしまったそうだ 
    当時の車事情をご存知の方ならわかると思うが、 
    昔は乗用車といえばセダンが主流でステーションワゴンはライトバンと呼ばれ、実用本位の車とされ乗用で乗る人は少数派 
    当然色も白や銀が多かったので華やかな感じがする赤色でライトバンは珍しかったのだろう 
    デザインも箱を組み合わせたようなカクカクの車が多かった 
    ライトも角型か丸目で釣り目ライトなんて見たことも聞いたこともない 

    681 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 20:00:20.28 ID:rASUw6UJ0爺さんの話を聞いた親父は「何かの用事で神社に来ていた消防のライトバンだろう 釣り目ライトや流線型はそのライトバンが動いていたから、そう見えたんだ」と説明したが 
    爺さんは腑に落ちない様子でしきりと「気味が悪い」と繰り返してたそうだ 

    白いセダンと妙なデザインの赤いライトバンだけの何だか気味の悪い感じのする駐車場  
    それはまさしく俺が体験した状況そのものであり  
    爺さんが見たライトバンも俺の車に当てはまる部分が多い 
    俺が見た白いセダンについても車種やメーカーがわからなかったので、 
    断定はできないが丸目4灯、フェンダーミラー等当時爺さんが乗っていたトヨタ・コロナの特徴に当てはまるように思う、と親父は話してくれた 


    682 本当にあった怖い名無し sage2012/07/07(土) 20:01:09.57 ID:rASUw6UJ0偶然が重なり合っただけかもしれない  
    たまたま参拝客の少ない日に爺さんが何かの車を見間違え、30年後、何故か参拝客の少ない日にドライブにきた俺の目の前に愛好家が運転する旧車が現れた 
     ただそれだけの話かもしれないが、がらんとした駐車場や、昼間なのに何ともいえない不気味な空気を思い出すと「何か」が起こって、俺と爺さんが30年の時間を越えて、神社の駐車場で遭遇した そうとしか思えない 

    文章が下手で申し訳ない  
    何回か読み返してみたけど、分かりづらいところもあるだろうし、俺が感じた気味の悪さがうまく伝えきれて無いようにも思う 
    だけどあの日感じた何とも不思議で不気味な体験を誰かに伝えたくて書きました。 

    690 682 sage 2012/07/07(土) 23:32:27.75ID:rASUw6UJ0レスしてくださった皆様 ありがとうございます 

    不思議という感覚もありましたが、不気味な感じのほうが強かったように思います 
    自分がよく知っている地元の神社のはずなのに 
    別の世界に迷いこんで、見てはいけない物を見てしまったような… 

    漠然と「ここはヤバイ。これ以上ここにいちゃいけない」という気持ちになった事を覚えています 

    自分あまりオカルト的なものは信じないし、今までこの板にお邪魔したこともなかったのですが 
    今回、自分の理解が到底及ばないような「何か」が起きたのだと思います 

    自分の周りには、こんな話をしても「偶然」の一言で片付けられてしまいそうだし 
    あの時の気味の悪さを考えると、この話はリアルでは決して話さず、墓場まで持っていった方が 
    良い気がするのですが、オカ板の方なら理解してくれるんじゃないかと思い、書かせていただきました 

    105 藤 サヨナラ New! 2007/10/29(月) 12:48:48 ID:6sJHbqVBO気ままな学生生活も終りに近付き、いつしか学校を卒業し、仲の良かったクラスメイト達とも連絡を取り合ったのは最初だけ。 
    僕も進学先の場所に合わせて一人暮らしを始めたりと忙しかったこともあり、次第に誰とも疎遠になっていった。 
    「あいつ」とも、ある一件以来何の接触も持たなくなった。当然といえば当然のことだ。仲良くしていた日々を思えば懐く、愛しく感じる。でも、「あいつ」のしたことが正しかったと言い切る自信はなかったし、許せないと感じる僕もいた。 
    そんなことを時折考えながら過ごしていた、ある時。今からまだ二年くらい前のことだ。僕は卒業に向けて提出物の準備をしていた。 
    進学するつもりはなく、就職することをを決めていた為、それに関する膨大な書類や何枚もの履歴書、就職希望先に関する資料などが山のようにあった。 
    それにいちから目を通し、書くものは書き、提出する物は分けて…そんなことをしていたら、ふと地元に帰りたくなった。現実逃避がしたかったんだと思う。その日のうちに荷物をまとめて、ギリギリ最終列車で地元に向かった。 
    列車に揺られながら、窓からだんだんと見えて来る地元の風景に胸が踊った。見慣れた風景なのにやたらと懐かしい。 
    そのとき、ふと巨大な墓地が見えた。地元にある霊園だ。真っ暗なのにハッキリ見えたのは、提灯を持った行列のようなものがあったからだった。 
    始めは人魂がと思ったが、列車が近付くにつれて人間が提灯を持って並んで歩いてるのがわかる。 
    「こんな時間に墓参りか…?」 
    僕は気になって、駅に着くなり荷物を持ったまま霊園に向かった。 
    霊園に着くと、提灯の集団は見えなくなっていた。どうやらだいぶ先へ進んでいったらしい。放っておけばいいものを何故かやたらと気になって、僕は先へ進んだ。 
    「あいつ」とも、よくこうやって好奇心で墓場に来たな。なんて思いながら。 
    そして、霊園の真中まで進んできたところで集団を見つけた。老若男女問わず提灯を持って並び、何か楽しげに話している。僕は墓に隠れて話を盗み聞いた。すると、 
    「ここは俺の墓。」「これは私」 
    「僕のはここにはないみたい」「なら先に進もう」「そうしようそうしよう」 
    そんな会話が聞こえてきた。逃げなきゃいけない、と思った。霊にせよ生きてる人間にせよ、あんな会話の時点でマトモじゃないのは確かだ。 



    106 藤 サヨナラ New! 2007/10/29(月) 12:52:22 ID:6sJHbqVBO集団が会話に夢中になってる今なら、逃げられる。僕は走り出す姿勢をとった。 
    だが。 
    「お兄ちゃん、何してるの?」 
    ひどくノイズのかかったような声。見上げれば、幼い女の子の顔が隠れていた墓石の上から覗いていた。そこでもう、あの集団はこの世のものではないと確信した。 
    だって、この女の子は顔形から見てせいぜい3、4歳。そんな女の子が、どうして大人の僕が隠れていられるほど大きな墓石の上から顔を出せるのか。しかも、顔だけ。 
    数年ぶりに感じた恐怖に、僕は一目散に走って逃げた。集団が追いかけて来るのがわかる。ノイズがかった声も聞こえる。 
    ただひたすら怖かった。あの頃は、危ないときはとなりに「あいつ」がいた。でも今はいない。そんな今あの集団に捕まったあとのことを考えると、洒落にならない恐怖だった。 
    霊園が、道が長い。逃げても逃げても道がある。それでも泣きわめきながら逃げた。だが 
    「あっ」 
    何かに躓いた。転んで、座り込んだ。ああもうだめだと思った。躓いたのは墓石。後ろから追いかけてくる提灯の光。 
    「くそっ」躓いた墓石を座り込んだまま蹴飛ばした。そのとき。 
    「罰当たりな奴だな。」 
    聞き覚えのある声がした。視線を上げると、嘘だろう?「あいつ」がいた。 
    「ナナ…シ…?」 
    あの頃より少し大人びたナナシがいた。苦笑して、僕に手を差し出す。 
    「惚けてる場合か。走れ。」 
    追いかけてきたぞ、と呟いて、ナナシは僕の手を引いて走った。ああこの背中だ。いつも厄介なことやらかしては、ヘラヘラ笑いながら僕の手を引いて逃げた背中。どんなに怖くても、この背中を追いかけてれば安心だった。 
    現に、ひとりで走った絶えがたい恐怖は、安心に変わっていた。 
    走って走って、霊園を抜けた。霊園を抜けるともう提灯は追いかけて来なかった。僕ひとりだったなら確実に捕まっていただろう。ナナシにものすごく感謝した。ありがとうと何度も呟いて、泣いた。 
    「もう怖くないよ。怖いものは、もういない。怯えなくていい。」 
    ナナシは言った。僕は、余計に泣いた。 
    僕は知ってる。ほんとにそう言って欲しいのは、否、ほんとにそう言って欲しかったのは、あの頃のナナシだったこと。ヘラヘラ笑いながら怯えていた、幼かったナナシだったこと。 


    107 藤 サヨナラ New! 2007/10/29(月) 12:53:29 ID:6sJHbqVBOなのにあの時僕はそれに気付かずにナナシを頼ってばかりでいた。あの時気付けていれば、ナナシはあんなことをしなくて済んだのに。僕が許せなかったのは、あの時のナナシではなく、あの時の僕だったんだ。僕は、目の前のナナシに何度も謝った。 
    ナナシは大人になっても、やっぱりヘラヘラ笑った。 
    「じゃあ、気をつけて」 
    ナナシは駅まで僕を見送ると、ヘラヘラ笑って帰った。僕も手をふり、駅からタクシーで実家に帰った。また、ナナシとあの時のように友達に戻れるかもしれないと、少し期待を抱きながら。 
    次の日、僕は母の命令で祖父母の墓参りに行かされた。場所はあの霊園。正直目茶苦茶行きたくなかったが、仕方なく行った。昼間で明るいと霊園は綺麗に手入れされていてちっとも不気味じゃなかった。 
    中ほどまで進むと、僕は何かに躓いた。昨日の墓石だ。 
    「昨日も今日も、蹴飛ばしてゴメンな」 
    謝り、墓石を見た。 
    そして、僕は泣いた 

    そこには紛れもなく、ナナシの名前が刻まれていた。一年前の昨日に、亡くなっていた。 
    僕は泣いた。泣いて泣いて泣きわめいた。 僕の親友は、もうどこにもいない。あの背中は、もうどこにもない。 
    結局僕は一度もナナシを救ってやれないまま、 
    最後までナナシに救われていた。 

    僕と、僕の親友の話は、これでおしまい。 

    398 藤 2007/08/29(水) 23:35:27 ID:tbgXgw8NO学生時代、二学期も半ばに差し掛かった頃。 
    僕らのクラスでは、なぜか『学校の怪談』というアニメが大流行し、今更ながらオカルトブームが訪れていた。女子はこぞっておまじないなどにハマりだし、男子は肝試しに出掛けた。 
    僕としては、今まで友人のナナシと体験してきたことのほうがよっぽど怖かったし、当のナナシも今までの体験談を話すこともなく、いつものようにヘラヘラして皆の話を聞いていたから、何も言わなかった。 
    散々出まくった都市伝説にキャーキャー言うクラスメイトたちを見ていると、『知らぬが仏』って本当に名言だなあ、と思っていた。 
    そんなとき、唐突に声をかけられた。 
    「今日、俺ん家来ないか?」 
    それは、ヤナギと言うクラスメイトからの誘いだった。ヤナギは、親父さんが貿易だか輸入なんたらだかの会社の社長で、まあ、いわゆるお金持ちだった。 
    でも金持ちにありがちにな厭味がなく、むしろサバサバして皆から好かれていたし、僕やナナシも仲良くしていた。 
    「なんで突然?」 
    僕が尋ねると、 
    「ウチの親父が、珍品コレクター、っての?なんか不気味なモンばっか集めててさ。 
    いわくありげな物もあるから、見に来ないかなぁと思って」 
    と、ヤナギは言った。すると、いつの間にかナナシが僕の隣に立っていて、 
    「行く行く。ぜひともお邪魔します。俺もこいつも、そうゆうの好きでさぁ」と、 
    僕の肩をつかんで引き寄せ、僕の意思や意見は完璧無視で誘いを受けやがった。 
    こうして、僕らはヤナギの家にお邪魔することになった。 



    399 藤 2007/08/29(水) 23:36:23 ID:tbgXgw8NO「ここなんだよ。」 
    放課後、馬鹿デカいヤナギの家に着くなり、僕らは地下室に案内された。 
    地下室と言っても、じめじめした嫌な雰囲気はなく、特に怖いことが起こる予感はしなかった。正直、ナナシといると変なことばかり起こるので、来るまでは不安だったのだが。 
    「今日は親父いないから、まあゆっくり見てけよ」 
    ヤナギが地下室の鍵を開ける。なんだかんだ言いながら押し寄せていた期待感に心臓をバクつかせていると、ドアが、開いた。 
    「…ん?」 
    しかし、中には期待していたようなおかしなものはなかった。古い本や、ちょっと大きな犬の剥製、振り子時計なんかが置かれているだけだった。 
    「べつに珍品じゃないんじゃね?」 
    もっと、こう、動物の生首だとか奇形物のホルマリン漬けだとか、殺人鬼が使っていた刀だとかを想像していた俺は、 
    なかばがっかりしながら言った。しかし、隣に目をやると、ナナシが笑っていて僕はゾッとした。いつもの 
    ヘラヘラした笑顔ではなく、あの不気味な歪んだ笑顔だった。 
    「まあ、そうでもないんだよ」 ヤナギはそんなナナシの様子に気付くことなく、僕の発言に答える。 
    「たとえばこの振り子時計。これは、どっか外国の殺人鬼の物でさ、この扉の中に殺した人間の指の骨を入れて集めてたらしいよ。 
    こっちの剥製は飼い主の赤ん坊を噛み殺した犬らしいし、この 
    本は自殺した資産家が首をくくるときに踏み台にしたものなんだと。」 
    ヤナギがスラスラと不気味な話をし出す。つまりヤナギの親父さんは、そうゆういわくつきの物をコレクションしてるわけだ。 
    「まあ、本当かどうかはわかんないけどさ。」 
    ヤナギは笑った。そのとき、 
    「なあ、これ、何?」 
    ナナシが何かを見つけた。 

    400 藤 2007/08/29(水) 23:38:26 ID:tbgXgw8NOそれは、ちょっと煤けていたけど、立派な女の子の人形だった。フランス人形か何かだろうか、青い瞳を伏せている。 
    「ああ、それか」 
    ヤナギが人形を持ち上げる。 
    「これは特に不気味なもんじゃないんだけど、変わった作りがしてあってさ。」 
    ココ、と、ヤナギが人形の瞳をつつく。 
    「なんか、角度や色が細かく計算してあって、絶対に目が合わないようになってんだよ。」 
    なるほど、確かに目が合う人形は山ほどある、というかむしろ人形とは目は合うものだが、絶対目が合わない人形とはめずらしい。僕も人形をヤナギから受けとり、目を見てみた。 
    確かに、微妙に目の焦点がズレて見える。 
    「へぇ。こいつは面白いな」 
    僕は人形を色んな位置に移動させて、目を合わせようと試みた。けど、やはり目が合わない。どこか違う方を見ている。 

    そのとき、気付いた。 
    どんなに移動させようと、角度を変えようと、目の合わない人形。その人形が、僕から目をそらし、見ている一点。 
    それは、 ナナシだった。 
    「え?え?」 
    僕は場所を変え角度を変え、立ち位置を変え、人形を動かした。しかし、どんなにそれらを変えても、目の合わない人形はナナシの方を見ていた。 
    どの位置に立っても、ナナシがいる方に目線が向いている。じっと、睨みつけるように。 
    おかしい。 
    オカシイオカシイオカシイ。 
    僕はパニックになって人形を揺さぶっていた。怖くて怖くて仕方なかった。どうしてナナシの方を見るのか。どうして。 
    そのとき。 


    401 藤 2007/08/29(水) 23:39:39 ID:tbgXgw8NO「ホラ、いい加減にしろ。」 
    ナナシが僕の手から人形を奪うと、元の場所に置いた。僕は汗だくになっていた。 
    「悪いなヤナギ、こいつ夢中になると我を忘れるから。でも面白いな、 
    親父さんのコレクション」 
    ナナシがヤナギに詫びを入れ、ほかに話を振る。ヤナギも特に何か疑う様子もなく、話をしている。それでも僕は、やっぱり人形を見ていた。 
    人形は、やっぱりナナシを睨みつけていた。 


    しばらくお喋りをして、僕とナナシはヤナギの家を後にした。帰り道、僕はナナシに思い切って言った。 
    「ナナシ、あの人形…」 
    「ずっと俺のほう見てただろ?」 
    やっぱりナナシはわかっていた。ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら、僕を見る。 
    「なかなかお前も、だいぶカンがよくなったじゃねぇか」 
    俺の教育の賜物だ、などとふざけたことを抜かすナナシに腹を立てつつ、半ば呆れて僕は言った。 
    「お前、よく怖くないよな。」 
    するとナナシは、ハッ、と鼻で笑うと、 
    「俺はお前の後ろに突っ立てた、手足がやたら折れ曲がった女のが怖かったぜ?」 
    ベキベキベキって、聞こえてきそうでさ。 
    と、言った。 
    僕は急速に体が冷えてくのを感じた。 
    「ん?知らなかった?」 
    ナナシはケラケラ笑って、 
    「『知らぬが仏』って、ホント名言だよな。」 
    と言った。 
    どこかで聞いたセリフだと頭の隅で感じながら、僕は走ってその場を去った。 

    それから僕がヤナギの家に行くことは、二度となかった。 

    967 藤 New! 2007/08/08(水) 23:55:05 ID:bpBsGnB0Oお久しぶりです。まだ僕を覚えてくれている方がみえるかはわかりませんが、久しぶりに、ナナシの話を書いてみようと思います。 

    今日は、僕がナナシと体験したなかで1番気色悪かった話をしたいと思う。 
    幽霊とか死体とかそんなものより、僕はあの日のことが怖かった。 
    学生生活も残り半年あまりとなった頃。その頃すでに僕らは進学組と就職組に別れ、それぞれの勉強を始めていた。僕とナナシは進学組、 
    アキヤマさんは意外にも就職組で、その頃は次第に疎遠になっていた。 

    「イイの見つけた。」 
    その日、視聴覚室に篭って勉強をしていた僕に、青灰色のボロい本を携えたナナシがヘラヘラ笑って近づいてきた。 
    その本はどうやら図書館の寄附コーナーからナナシがパクってきたらしい。 
    僕らの地元にあるその図書館は、木々に囲まれた公園の端に建っており、なかなか貫禄がある。また、よく寄附本が集まり、 
    なかには黒魔術なんかの怪しい本も集まる。ナナシいわく、その中にたまに「アタリ」があるそうだ。 

    「で、それはアタリなわけだ。」 
    「アタリもアタリ、大アタリだ」 
    ナナシは笑った。普段はお調子者でヘラヘラしてて、クラスの人気者なナナシだが、 
    ある日を境目にオカルト好きな本性を見せるようになっていた。 
    「これ、革が違うんだよ。」 
    ナナシが嬉々として本の表紙を摩った。僕も触れてみたが、たしかに普通の本よりザラザラした革表紙だった。 
    「なんだよコレ」 
    聞いてもナナシは答えなかった。ヘラヘラ笑いながら、革を撫でている。そしておもむろに本を開くと、 
    「さあ、始めようか」 
    と言った。 



    968 藤 New! 2007/08/08(水) 23:56:41 ID:bpBsGnB0Oナナシは僕にあの本を渡すと、視聴覚室の隅に立つよう命じた。僕は今から何が起こるかもわからないまま、素直に隅に立った。 
    ナナシは本から切り取ったページを片手に、すごい早さで黒板いっぱいに文字を書き出した。 
    英語なのか漢字なのかわからないが、みたことのない文章や図がズラリと並ぶ様は相当薄気味悪い。おまけにナナシは 
    一言も喋ることなく、まさに一心不乱といった様子でカツカツと黒板にチョークを滑らせている。 
    「ナナシ、何だよこれ」 
    ナナシは答えない。 

    やがて書き終えたのか、ナナシがこちらに向き直る。その顔はいつものヘラヘラした笑顔だが、何かが違う気がした。 
    「それ、読んで。」 
    ナナシが本を指差す。雰囲気からして洋書かと思ったが、中は意外にも日本語で書かれたものだった。 
    なんと書かれていたかは今はもう覚えていないが、なんだか意味を成さないような不気味なものだったと思う。 
    それでも、怖いもの見たさもあったのか、僕は書かれた文章を読み上げた。 
    そのとき、聞き慣れた声がした。 
    「あんたたち何してんの?」 
    窓枠に寄り掛かり僕らに声を掛けてきたのは、他ならぬアキヤマさんだった。 
    「面白そうじゃない、あたしも混ぜてよ」 
    窓枠に足をかけ、中に入ろうとする。怪しい行為をしていた最中だったのでにちょっと僕もビビッたが、 
    久しぶりにアキヤマさんと話せることが嬉しくて、僕はアキヤマさんに駆け寄った。 
    そのとき。 
    「アブないぞ、ソレ。」 
    ナナシがアキヤマさんを指差した。そのナナシの物言いにカチンと来た僕は、ナナシに抗議した。 
    「ソレってなんだよ、おま…」 
    「よく見ろよ、ソレはどっから来た?」 
    「どこって窓からに決まって…」 
    そこで、めちゃくちゃ遅ればせながら気付く。ここは視聴覚室。 
    ----3階だ。 



    969 藤 New! 2007/08/08(水) 23:58:22 ID:bpBsGnB0O『コレ』は、アキヤマさんじゃない。そう気付いた瞬間、「ソレ」は酷く歪んだ笑顔で、体をクネクネさせながら僕に近づいてきた。白目に赤い筋がたくさん浮かび、それでも口元は笑っている。 
    「うぁあぁあぁあ!!!!!!」 
    僕は無我夢中で『ソレ』を払いのけ、外に押し込み、窓を閉めた。途端、けたたましいくらいにガラスを叩く音がする。 

    …内側、から。 
    「ナナシ!!!ナナシ!!」 
    僕は半狂乱になりながらナナシを呼んだ。ナナシなら助けてくれる、と漠然に思った。でも、ナナシは僕を見て笑っていた。 
    「ははははは!!最高だよお前!!!!!」 
    僕は本気でナナシに殺意を抱いた。 

    気がついた時、僕は汗だくになって床にヘタリこんでいた。ナナシが自分のTシャツで汚いものを拭くかのように僕の顔を拭っていた。 
    「結局、あの本は何だったんだよ」 
    叫び過ぎて掠れた声で、僕はナナシに聞いた。ナナシはヘラっと笑うと、 
    「降霊術みたいなもんさ」 
    と言った。 
    「会いたいものを呼び出せる呪文と方位がのってる。さすがに犬皮使ってる本だから、ヤバそうだとは思ったけど」 
    いろんなヤバイモンが詰まってるよ、コレ。 
    ナナシは笑って言った。 
    「俺じゃなくて、本持ってたお前の会いたいやつが出て来たのは誤算だったな。まあ、中身は違うけど。お前、よっぽどアキヤマに会いたかったんだな。」 
    ナナシはそう言うと、またヘラヘラ笑いながら本を抱えて歩いて行った。 
    ちょうど下校の鐘が鳴って、僕もナナシの後を追う。前を歩くナナシの背中を見ながら、僕は思った。 
    『いろんなヤバイモンが詰まってるよ、コレ。』 
    『俺じゃなくて、本持ってたお前の会いたいやつが出て来たのは誤算だったな。』 

    そこまでして、ナナシは 

    一体 なにを 呼び出したかったんだろう? 

    その答えを知ることになるのは、もう少し、先の話。 



    最高級天然石で世界にひとつだけのブレスレット

    823 藤 「手」 2007/07/30(月) 23:01:11 ID:OAPyAtndO
    学生時代、まだ桜も咲かない3月のその日。 
    僕はクラスメートのアキヤマさんという女の子と、 
    同じくクラスメートの友人の家に向かっていた。 
    友人は仮に名をナナシとするが、ナナシには不思議な力があるのかないのか、 
    とにかく一緒にいると奇怪な目に遭遇することがあった。 

    そのナナシがその日、学校を休んだ。 
    普段はお調子者でクラスの中心にいるナナシが学校を休むのは 
    すごく珍しいことで、心配になった僕は放課後 
    見舞いに行くことにした。 
    そこに何故か「私も行く」と、アキヤマさんも便乗したわけだ 

    とにかく僕ら二人は連れだって、ナナシの家に向かった。 


    ナナシの家は、学校から程遠くない場所にあった。僕はナナシと親しくなって1年くらい経つが、 
    たまたま通りかかって「ここが俺ん家」と紹介されることはあっても、 
    自宅に招かれたことはなかった為、少しワクワクしていた。 
    ナナシの家は、今時珍しい日本家屋で、玄関の門柱には苗字が彫り込まれていた。 
    「…やばい家。」 
    アキヤマさんが呟く。僕はこのとき、「確かにヤバイくらいでかい家だな」なんて 
    思っていたが、今にして思えばアキヤマさんが言っていたことは全く違う意味を持っていたのだと思う。 
    それは「今となっては」言える話で、あのとき僕がこの言葉の意味に気付いていれば、 
    僕らとナナシには別の未来があったかもしれないと悔やまれるが、 
    それは本当に今更なので割愛する。 

    828 藤 「手」続き 2007/07/30(月) 23:21:02 ID:OAPyAtndO
    呼金を鳴らし、「すみませーん」と声をかけた。 
    しばらく無音が続いたが、1,2分後に扉が開き、背の高い女の人が出て来た。 
    僕とアキヤマさんは、自分たちがナナシのクラスメートであること、 
    ナナシの見舞いに来たことを伝えた。 
    女の人は「ありがとう」と笑うと、ナナシの部屋に案内してくれた。 

    部屋に入ると、布団にくるまって漫画を読んでいるナナシがいた。 
    僕らに気付いたナナシが、ヘラヘラ笑ってヒラヒラと手を振る。 
    案外元気そうな姿に、僕は安堵した。 
    「なんだよお前、元気なんじゃないか」 
    僕は笑ってナナシに話掛けた。 
    アキヤマさんは黙って鞄を置くと、部屋を見回した。 
    「なんでアキヤマがいんの」 
    ナナシが小声で僕に尋ねた。僕もなんとも答えられず、「まあまあ」とわけのわからない返答をした。 
    ナナシの声は、小声だからというのもあるだろうが、かなり掠れていて痛々しい程だった。 
    見た目と違い、かなり酷いのかと心配になった、そのとき。 

    「ナナシ。あれ、何。」 

    アキヤマさんが、口を開いた。 

    834 藤 「手」続き 2007/07/30(月) 23:54:54 ID:OAPyAtndO
    アキヤマさんが指差した場所には、コルクボードがあった。 
    眼鏡をかけて改めて見ると、何枚もの写真と、何枚かの手紙やプリントが貼られている。 
    なかには僕らが授業中に回していた手紙もあった。 
    「なんだよ、わざわざ飾ってんのかよ」 
    ナナシが手紙をとっといてくれたことが、なんだか無性に嬉しかった僕はナナシを肘でつついた。 
    しかし、アキヤマさんはニコリともせず、 
    「そうじゃなくて。その真ん中。」 
    と、続けた。 
    僕は目線を真ん中に向けた。すると、そこには、 
    異様な写真があった。 
    「…え」 
    それは、どう見ても心霊写真です、といった感じの写真だった。 
    写っていたのは、ナナシと先程の背の高い女の人で、見事な夕日を背景にしている。 

    そこまでは、なんらおかしくなかった。 
    おかしいのは、ナナシの、一部。否、ナナシを囲むもの、というべきか。 
    女の人にもたれ掛かるようにしたナナシの顔の両端に、白いものが写っている。 
    それは、手のような形をした、白い靄だった。 

    「ナナシ、これ…」 
    「ああ、それか。」 

    少しガタついてる僕に、ナナシは漫画を置いて、向き直った。 
    その表情は哀しそうで、そしてどこか嬉しそうでもあった。 

    「それは、母さんと撮った最後の写真なんだ」 

    ナナシは、そう言って語り始めた。 
    836 藤 「手」続き 2007/07/31(火) 00:10:21 ID:sBeTRknUO
    「俺の隣が母さん。2年前に、死んだ。」 

    ナナシは少し俯いて言った。 
    「その写真撮った次の日に、その写真撮った屋上から飛び降りた。」 
    淡々とした言い方だったが、それはナナシが背負ってきた悲痛が全て凝縮したような切ない響きを持っていた。 
    見事な夕焼けを背にして笑う親子、まさかそれが翌日には哀しい別れ方を迎えるなんて、 
    哀し過ぎる。 

    「その写真、母さんの誕生日に棚整理してたら見つけてさ。半年くらい前。2年前に現像して見たときは、たしかに何も写ってなかったんだけど。 
    そんとき改めて見たら、その靄が写ってて。」 
    僕は黙って聞いていた。 
    アキヤマさんも、じっと写真を見つめて黙ってた。 

    僕は今更、ならばさっき会った女の人は何だとか、わかりきった追求をする気はなかった。 
    ナナシといたら怖い体験をする、ってのは、それこそ今更だったし。 

    きっと、死んだあともナナシのお母さんは、ナナシが心配で、この家にいるんだろう。 
    遺して来たナナシが、心配なんだろう。 
    そう思った。 

    「その靄、手の形してるだろ?俺も最初は怖かったけど、 
    見てるうちに、きっと母さんが、俺を守ってくれてんだ、って思ってさ。」 

    その手が、きっと俺を守ってくれてるんだ、って思って。 

    ナナシは、そう言って笑った。 
    838 藤 「手」続き 2007/07/31(火) 00:21:57 ID:sBeTRknUO「だから、飾っちゃってるわけ。マザコンぽくて、アレだけどな。」 

    ナナシは掠れ声でそう言うと、いつもより少し照れたようにヘラッと笑った。 
    僕はうっかり泣きそうになるのをグッと理性で押さえ、 
    「このロマンチストが」なんて馬鹿馬鹿しいツッコミを肘で入れた。 
    ナナシとは怖い体験も何度かしたけど、この話を聞いて、やっぱり僕はナナシを好きだと思った。 
    僕らを見て「ありがとう」と笑った、ナナシのお母さんの顔を思い出す。 
    僕は、ナナシとずっと友達でいよう、あのお母さんのぶんも、ナナシの傍にいよう、と心底思った。 

    そのとき、 
    「元気そうで何よりだわ。明日は学校で会いたいわね。」 
    と、アキヤマさんが唐突に言った。一瞬にして先刻までの感動ムードが吹っ飛ぶ。 
    アキヤマさんはそんな空気変化を無視し鞄を抱えて、 
    お大事に、と一言掛けると、部屋を出た。 
    僕は一瞬呆気に取られたが、我に帰り、慌ててアキヤマさんを追い掛けた。 

    「また明日な!!!」 
    ナナシに声を掛けると、ナナシはいつものヘラヘラした笑顔で手を振った。 
    それを見届けてから、僕はアキヤマさんを追い掛けて広い廊下を走った。 

    あの女の人は、もういなかった。 

    847 藤 「手」ラスト 2007/07/31(火) 00:55:43 ID:sBeTRknUO僕がナナシの家を出たとき、アキヤマさんはすでに数十メートル先を歩いていた。 
    僕は必死でアキヤマさんを追い掛け、並んだところでその肩を掴んだ。 
    「アキヤマさん!!」 
    「…なに」 
    アキヤマさんは振り返る。その顔に表情はなく、異様なくらいの冷たさを感じた。 
    「なんで、あんな言い方したんだよ。ナナシが可哀相じゃん、お母さんが…」 
    そこまで言って、僕は何も言えなくなった。アキヤマさんが、嫌悪と怯えを入り交じらせたような形相で、僕を睨んでいたからだ。 
    「…アンタ、本当にあれが『守り手』だなんて思ってんの?」 
    アキヤマさんが強い口調で言った。その真っ直ぐに向けられる視線は、信じられないとでも言うように僕を刺していた。 
    「だって…それしか」 
    「本当にそう思ってんならシアワセね。」 
    アキヤマさんは心底馬鹿にしたように言い放った。 

    「アタシには、あの手がナナシの首を絞めようとしているようにしか見えなかったわ。」 
    そう言うと、アキヤマさんは足を早め、帰っていった。曲がり角を曲がって、 
    見えなくなるアキヤマさんを呆然と見送りながら、僕は、 
    あの写真を思い出していた。 
    夕焼けを背にした親子、その翌日に飛び降りて死んだ母、息子の首元にかかる手型の靄。 
    そして、良好そうな体調の割に、酷く掠れた、ナナシの声。 

    もし仮にアキヤマさんの台詞が真実なら、僕らが見たあの人は、 

    ナナシをどうするつもりだろう? 


    耐え難い悪寒と戦慄を感じ、僕は走った。嫌な予感が現実にならないのを祈りながら、ナナシの家が見えなくなるまで、走った。 

    翌日、ナナシはいつもどおり学校に来ていたが、声はさらに掠れていた。 
    このときすでにカウントダウンは始まっていたのかもしれないが、 
    やっぱりそれは、今更の話。 

    688 本当にあった怖い名無し2007/07/29(日) 20:50:15 ID:7Cx8lAjbO御晩です。 
    昨日、ナナシと言う友人の話を書いた者です。 
    今日も、ナナシについて、少し話をしたいと思います。 


    あの悪夢のようなアパートでの事件から数カ月が経ち、 
    僕とナナシはまたお互いに 
    話をするようになっていた。 
    初めのほうこそ、多少ギクシャクしたが、 
    結局ナナシに不思議な力があろうがなかろうが、 
    あの女の人がどうであろうが、 
    ナナシはナナシで、僕の友達だということに変わりはない。 
    僕はあの日のことは記憶の底に沈め、ナナシと 
    普通に話すようになった。 
    ナナシも、今までと同じようにヘラヘラ笑って、話掛けてきて、 
    僕らはすっかり以前のような関係に戻っていた。 

    そんな、矢先のこと。 
    そろそろマフラーやらを押し入から出さないとな、なんて 
    時期の授業中。それは、起きた。 

    694 本当にあった怖い名無し ナナシの続き 2007/07/29(日) 21:10:41 ID:7Cx8lAjbO教室では、窓際の最前列に 
    目の悪かった僕と委員長の女の子、
    その後ろにナナシと、アキヤマさんと言う女の子が座っていた。 
    その頃、その窓際席の僕ら4人は授業中に手紙を回すのを 
    ひそかな楽しみにしていた。 
    つまらない授業の愚痴や、先生の悪口を小さいメモに書いて 
    先生が見ていない隙にサッと回す。
    もしバレても、委員長がごまかして僕らが口裏を合わせることに 
    なっていたし、端とはいえ、前列で手紙を回すのは、 
    ちょっとしたスリルだった。 

    そしてそれは、たしか3時限目あたりの国語の授業中。 
    どこの学校にも一人はいるであろうバーコードハゲの教師が担当で、 
    今にして思えば大変失礼だが、 
    僕らは彼の髪型をネタに手紙を回していた。 

    くだらないことをしていると時間が過ぎるのは早く、 
    すでに何枚か紙が回され、授業も半ばを過ぎた。 

    そのとき、だった。 
    696 本当にあった怖い名無し ナナシの続き 2007/07/29(日) 21:17:06 ID:7Cx8lAjbO教科書に隠しながら手紙を書いていた僕は、 
    ドン、と何かに背中を突かれた。どう考えてもそれは 
    後ろの席のナナシで、 
    「まだ書いてるのに、催促かよ」と、僕は少し 
    ムッとしながら振り返った。 
    するとそこには、眉間に皺を寄せた凄まじい形相で、 
    僕に何かを向けているナナシがいた。 
    手には開いたノートがあり、真ん中にデカデカとマジックで 

    「窓」と書いてあった。 

    思わず窓を見ると、 

    「ひっ…」 


    人と、目が合った。 

    698 本当にあった怖い名無し ナナシの続き 2007/07/29(日) 21:28:48 ID:7Cx8lAjbO蛙のような体制で落下してきたその人は、顔だけをこちらに向けていた。 
    恐怖か苦痛か屈辱かわからない、むしろ全て入り交じったような 
    悶絶の表情を一瞬見せて、その人は消えた。 
    「うわぁああっ!!!」 
    僕ではない誰かが叫んだ。叫んだのとほぼ同時に、ドシン、と音が響く。
    しばらくフリーズしていた教師やクラスメート達も、2,3秒して 
    騒ぎ立て、窓に駆け寄り出す。 

    僕はその様子を茫然と見ながら、フラッシュバックを感じていた。 
    701 本当にあった怖い名無し ナナシの続き 2007/07/29(日) 22:23:12 ID:7Cx8lAjbOまただ。またナナシが、人の死を言い当てた。 
    僕は震えながら、ゆっくりとナナシを見た。 
    ナナシは、震えもせず騒ぎもせず、窓の前に立っていた。 
    遠い目で窓を見ている。僕は、ナナシに駆け寄った。 
    「ナナシ、あれ…」 
    縋るように駆け寄った僕に、ナナシは振り返ることもせず言った。 
    「お前、なにか見た?」 
    なにか。 
    そんなの解りきっているというのに、白々しく尋ねてくるナナシに僕は無性に腹がたった。 

    「当たり前だろ!!お前が窓を見ろって言ったんじゃないか!!おかげで僕は目が合ったんだ!!見たんだぞ!!あの人が堕ちる一瞬を!!!」 

    僕は、あの死に行く人と目を合わせてしまったのだ。 
    悲痛と苦痛に染まった、間もなく死ぬであろう見知らぬ人と、目が合った。 
    一生トラウマになりそうな、表情を見たのだ。 

    「なら、いよいよオカルトだな。」
    ナナシは言った。 
    僕にはその言葉の意味がわからなかった。わかりたくもなかった。だが、 
    「見てみなさいよ、下。」 
    さっきまで黙っていたアキヤマさんが、僕に言った。 

    僕は恐る恐る、人を掻き分けて下を見た。 
    そこには、こちらを向いて目を見開き、苦悶の表情を浮かべながら 
    体を不思議な方向に曲げた死人がいた。 
    ドス黒い血が彼女の白いブラウスを赤茶に染めていて、 
    僕は思わず目を反らした。 

    そして、気付いた。 


    702 本当にあった怖い名無し ナナシの続きラスト 2007/07/29(日) 22:54:36 ID:7Cx8lAjbO僕は、彼女と目が合ったんだ。それは確かだ。あの表情は、夢じゃない。 
    蛙のような、這うような姿勢で彼女は落ちて来た。そして、僕を見ていた。 

    …なら、何故、彼女は「こちらを向いて」死んでいるのか。 俯せに落ちたはずの人間が、何故仰向けに死んでいるのか。 
    空からたたき付けられた人間が、まさか寝返りなどできるはずもない。
    まして、あの数秒間で、誰かが動かしたはずもない。 

    否、それよりも。 
    どんな飛び降り方をすれば、「蛙のような体制」に、落下することができるのか。 
    否、どんな飛び降り方をすれば、 
    「蛙のような体制で、こちらを向いて落下できる」のか。 

    その疑問が浮かんだとき、震えは一層強まり、首筋に冷たい何かを感じた。 

    不意に、ナナシが口を開く。 
    「死んだ先に何がある。救いなんて、あるはずないのに。闇から逃れても、闇しかないんだ」 
    その言葉には恐ろしいくらい感情が篭っていなかった。 
    アパートのときよりも、数倍、僕は、ナナシを怖いと感じた。 
    赤い海に浮かびながら、僕らを見上げる曲体の死人より、 
    ナナシの言葉が怖かった。 


    その後、席替えがあり、 
    僕が窓際になることは二度となかった。 

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